アジア連帯経済フォーラム
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アジア連帯経済フォーラム 学びの旅レポート
NPO法人 ほっとポット訪問 
2009年10月15日



連帯経済フォーラムでは、日本国内をはじめアジアにひろがる“連帯経済“をみつけ、実際に現地を訪ねる「まなびの旅」を実施しています。今回の旅では、生活に困窮されている方々の地域生活を、社会福祉士が総合的にサポートする「NPO法人ほっとポット」を訪問しました。参加したボランティアメンバーより、訪問の様子をご報告します!


地域生活サポートホーム見学
 
はじめに、ほっとポット代表の藤田さんに地域生活サポートホームを案内していただきました。地域生活サポートホームとは、住む場所がなくなり困っている方に一軒家の1部屋(個室)を低賃金で貸す事業です。定期的にほっとポットの職員が訪問して生活相談を行い、自立にむけてサポートしています。おおむね1年を目安に、アパート生活などの地域生活へ移行するための一時通過型サポートホームです。
*ほっとポットでは、ホームレス居宅生活支援移行支援事業として、地域生活サポートホーム以外にも、「あんしん生活サポート事業」、「生活まるまるコーディネート事業」を行っています。
サポートホームに入居している方は仕事でお留守でしたが、周辺環境を見せていただきました。従来、こういった施設は住宅地ではなく山奥などに大規模に建てていたそうです。しかし、ほっとポットでは相談者の今後の地域生活を考え、「住宅地」にある空き家を利用しています。現在サポートホームはさいたま市に14ヶ所(67室)あります。サポートホームを運営するにあたって、場合によっては反対運動がおこることもあったそうです。藤田さんの粘り強い説得で地域の理解を得てきました。現在まで地域の方と問題が起きたことはないそうです。サポートホームに暮らしている人の一つの形として、「半就労半福祉」という言葉を聞きました。これは、生活保護を受けながら、働くということです。その理由の一つに、相談者には複数の問題が複雑に絡まっているケースが多く、ケアに相当数時間がかかるということがあげられます。一般的に、就労して自立するということを考えられがちですが、これは本当に最終の目標なのです。

  
ほっとポット事務所にて講演
 
その後、ほっとポットの事務所にて、金子充先生と藤田さんの講演が行われました。相談者が来所中のため、青空のもとはじまりました。相談者が次々と訪れる日常を垣間見ました。金子先生からは、現在の貧困の状況と求められる支援についてお話を伺いました。劣悪な宿泊施設やシェルターによる貧困ビジネスについて、母子家庭への福祉サービスの少なさ、受刑者が受刑後に行く場のない状況、貧困や社会的に排除された状況に置かれている人は、複数の複雑な問題を抱えていることなど、埼玉の地域とからめて、幅広く貧困・排除についての話がありました。貧困・排除に対する支援は経済的な支援だけでなく「関係」や「つながり」が必要であり、孤立させてはいけないとのことでした。

藤田さんからは、ほっとポットの沿革について話がありました。藤田さんが、この活動をはじめたきっかけは、あるホームレスの人との出会いでした。その人は、銀行の支店長をつとめ、仕事の激務によりうつ病を患い辞職に追い込まれたそうです。福祉の制度には失業保険や生活保護などがありますが、どの制度も機能していない現実を、藤田さんは知りました。誰でもホームレスの状況になる可能性があり、制度の狭間で困っている人がいて、だれも助けてくれない現状を突き付けられたのです。藤田さんは、そのあと、新宿のホームレス支援や、さいたま市の河川敷のホームレスに声かけをしてアパートに入ってもらう活動を行っていきます。その中で、アパートに入ってもらうだけでなく、総合的にその方をサポートする必要性に迫られます。そのような活動を行う団体として、ほっとポットが立ちあげられました。
ほっとポットは総合的にサポートするため、時には1人に10機関が関わるケースもあるそうです。ほっとポットは様々な機関と連携しています。このネットワークは、今までの相談者のおかげだそうです。1人ひとりの相談者の課題を解決する際に、様々な機関に協力を求めます。そのおかげで今のネットワークが育まれてきました。今では、福祉事務所、法律事務所、警察署、地域包括支援センター、埼玉県庁、社会福祉協議会、障害者生活支援センター、病院、精神科病院、不動産屋、児童相談所、児童養護施設、更生保護施設、裁判所など、支援者は多岐にわたります。
今年度は相談件数が1000件のペースです。スタッフ6人で1000件に対応できるのは、この協力機関あってのことだそうです。パートナーのいない妊娠中の女性から相談を受けたケースでは、「地域で育てよう」と話し合い、地域での調整を行ったそうです。これは、子どもを産む本人の意思とともに、一つに生活保護という福祉の制度があるから、二つに親と子供を支えるためのネットワークと人員があるからこそできることです。ほっとポットでは経済的な支援だけでなく、「関係・つながり」という支援の両方が行われています。

現在、貧困問題だけでなく様々な場面で「ネットワーク」や「つながり」が求められています。しかし、実際にこれらを構築することは、困難がつきます。その要因は、従来の集団主義的な「つながり」ではなく、個人と個人の「つながり」だからかもしれません。ほっとポットではすべての人を受け入れています。一人ひとりの相談者に真摯に向き合い、「信頼」するという活動が、「つながり」の大事な要素だと感じました。



今回の旅のリンク
NPO法人 ほっとポット


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