アジア連帯経済フォーラム2009コンセンサス文書
この文書は、第二回アジア連帯経済フォーラム参加者の間で現在議論を進めているワーキング・ペーパーであり、その目的は、ローカル・リージョナル・グローバルのレベルにて、連帯経済に関する対話を推進することにある。この文書に対して出された見解や意見は、2011年にマレーシア・クアラルンプールにて開催される第三回アジア連帯経済フォーラムの参加者・関係者によって集約されることになる。
1.はじめに
かつてないほどの技術的進歩と便利さがもたらされた一方で、金融、環境、エネルギー、食糧、文化・社会などの要素を含んだ複合的な地球規模の危機は、社会と環境を崩壊の瀬戸際にさらしています。市場中心主義、経済の自由化、福祉国家を巨大多国籍企業との結びつきを深める「小さな政府」に代えることを通じて、経済・政治制度が再編されています。
自然資源の収奪によってもたらされた社会の分裂と環境の崩壊は、気候変動をもたらし、度重なる大規模災害の発生となっています。経済のグローバル化は、市場の失敗の影響を先鋭化させ、地域経済を周縁に押しやり、所得の不平等をもたらすと同時に、貧困層を増大させ、人権を侵害し、固有の文化を破壊しました。経済成長中心の社会の不均衡と不安定は、社会的弱者への負担を増し、戦争や紛争のひきがねとなっています。私たちが暮らす社会は平和の実現とはほど遠くなっているのです。
2.連帯経済へのビジョン
アジア連帯経済フォーラム2009に集まった私たちは、世界各地における市民社会の進歩的な勢力とともに、失敗した市場経済のオルタナティブとして、連帯経済を提案します。連帯経済という言葉は、連帯経済を推進する国際ネットワーク「RIPESS」によって中南米やEUで広く使われるようになり、2001年から始まった世界社会フォーラム(WSF)においても広がっていきました。
連帯経済が国際的な場において確実に定着してきたのには理由があります。経済のグローバル化が社会に破綻をもたらすにつれ、人びとは地域や各大陸、そしてグローバルなレベルで自分たちが周辺化されることに対して抵抗しています。市民社会の進歩的な勢力は、組織的な抗議、活動、対話、具体的なオルタナティブの発展のためのイニシアティブやアプローチを通じて、その機運をつくりだしているのです。アジア連帯経済フォーラムは、アジアにおける連帯経済運動が、他の大陸のパートナーとともに始めた大胆な一歩です。私たちは、責任ある、多元的な、連帯に根ざした経済の正当性を推し進めるためにアジアの人びとに呼びかけます。
連帯経済は、地域経済の多様性と活気をとりもどし、地域にある固有の資産を活性化することによって人びとの間に雇用を生み出します。各国の政治・社会経済のガバナンスに対する市民社会からの民主的な参加を促し、それによって正義やジェンダー平等、持続可能な経済のための社会の力を強めます。グローバル化とともに増えつつある外国人労働者や海外居住者、そして「弱者」「周縁化された」「切り捨てられた」人々を含めた、すべての人の人権を守ります。連帯経済は、共感と共鳴を伴う経済であり、自己の利益の増大ではなく、人びとの福祉・幸福を優先する経済です。
第二回アジア連帯経済フォーラムはグローバルなレベルとアジア地域レベルの連帯経済のビジョンの出会いと融合です。アジア各地や他の大陸の、連帯経済のオルタナティブな発展アプローチ――ここには、社会的責任ある投資、倫理的・社会的な連帯金融、マイクロファイナンス、連帯に基づく生産と市場、フェアトレード、持続可能な循環型農業・有機農業、社会的企業、女性による協同とジェンダー平等、オルタナティブな医療、国際連帯税、若者の参加、そして社会パフォーマンス基準などが含まれます――に光をあてることで、アジア連帯経済フォーラムは、地域社会において、そしてさらい広い範囲においても連帯経済を確立していけるだけの豊かな経験の蓄積を明らかにしたのです。
3.将来にむけて
目的に向けて手をつなぎつつ前進することの大切さを自覚し、私たちアジア連帯経済フォーラムへの参加者は、これからの数年間に以下の歩みを進めます。
1)アジア連帯経済連合を設立し、政策提言/アドボカシー、理論化活動と組織発展のための活動、連帯経済イニシアティブの活動の中心とします。
2)若者の育成に取り組みます。
3)グローバルなパートナーとの連携、ネットワーク、協力を進めます。
4)2011年、マレーシアにて開催される第3回アジア連帯経済フォーラムに向けて多くの人に呼びかけます。
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