2008年6月下旬、ニューオーリンズで開かれたアメリカ労働者協同組合連合（USFWC）の第3回大会の事前会議で、各地の協同組合の発表会が行われた。それは、近隣住民の経済発展のために協同組合が貢献できるいろいろな方法を発表する場であった。次のように、それぞれ創意溢れる取り組みが紹介された。

○ランヤップ（Lagniappe）ライフサービス協同組合
〔ニューオーリンズ市内にあって、聖マーガレット教会のナーシングホームを中心にライフサービスを提供する団体〕

• 非営利団体の聖マーガレットのナーシングホーム（老人福祉施設）は、77年間ニューオーリンズで地域高齢者に貢献してきたが、2005年のハリケーン・カトリーナにより閉鎖されてしまった。しかし、（「協同組合発展のためのミシシッピセンター」の支援の下で）「聖マーガレットの従業員にコミュニティーのための新しい仕事をする機会を作り出す」目的で、ランヤップライフサービス協同組合が設立された。これによって、聖マーガレットの施設は再開されたばかりではなく、地域コミュニティーの再建も図られた。　
• この労働者協同組合は、価値ある仕事と、従来とは違う雇用、そして質のよい仕事を創り出し、コミュニティーに食事を提供し、従来とは違う資金調達をめざしている。具体的な業務は、聖マーガレットのナーシングホームでの洗濯と清掃、そして食事サービスの請負である。今後は、地域コミュニティーにも同様のサービスを広げてゆく予定である。
• ランヤップとは「ちょっとした特別サービスの提供」のことで、「あなたのスマイルのためにエクストラマイル（いっそうの努力）につとめる」ことをスローガンとしている。長く勤める老人福祉施設の3人のスタッフの主導の下に、計24人の従業員によって、この組合は発足した。彼らは、優れた顧客サービス、健康的な環境、利便性、よい立地条件、よい評判の全部を兼ね揃えた「最先端の医療サービス」を年配者に提供することを目指している。
• 食事部門のマネージャーは、「我々はいつもコミュニティーのメンバーに、良質で栄養のある健康的な食事を提供している」と語る。この運動は、労働者に仕事を与えると同時に、顧客が質の高いサービスを受け続けることを可能にするもので、連帯経済の真価を考える上で、力強い教訓を与える。

○経済安定獲得のための女性行動（WAGES）
〔サンフランシスコのベイエリアで、典型的な低賃金に悩むラテン系や移民の女性に、健康的な仕事と適切な賃金の仕事を与える団体〕

• WAGESの役割は、環境に良い清掃サービス協同組合の維持発展に眼目を置いて、女性にとって健康的で価値ある仕事を創り出すことにある。それはすでに三つの協同組合に拡大し、2010年までにはさらに三つを作る計画である。
• WAGESは各組合に訓練と技術指導を行い、環境に良い清掃業務を通して,安全な労働条件を確保した協同組合を育成している。さらに民主的な有限責任会社のビジネスモデルを使って、労働者自身のオーナーシップの確立にも努めている。また、労働者には総合的健康保険を適用、カイロプラクティックやマッサージのサービスを提供、そして有給休暇を保証するという、今までの家庭清掃産業には前例のない取り組みを行っている。

○グリーンワーカー協同組合
〔ニューヨークのサウスブロンクスにあり、ニューヨーク市の廃棄物ゼロを支援するため、廃棄資源再利用のための「グリーンビジネス」を行う団体〕

• サウスブロンクスのコミュニティーを基盤にして、労働者のオーナーシップにより、市内の仕事を創出し、「グリーン」原則（持続可能社会を追求する）に基づく業務を行うビジネスモデルである。彼らはこれを「グリーンカラー」の仕事と呼ぶ。
• 傘下にある「リビルダーズ・ソース（ReBuilder’s Source）」は、同様の目的を持ち、建設資材の再利用センターとしては、アメリカで初めての労働者協同組合である。専門的な知識を積んだ上で、建設や取壊しの中から出た、余剰や回収資源の小口取引を行う。この組合のメンバーは、自分自身のビジネスを初めて持てたことについて、熱く語った。

○その他の組合紹介

• サンフランシスコの「アリスメンディ（Arizmendi）開発支援協同組合」（四つのベーカリーと一つの開発支援団体からなる）の代表者は、現行の成功している協同組合から生まれた新しい協同組合のモデルを作るアリスメンディの取り組みを紹介した。そして、連帯経済に従事する者は、民主的な地域経済を発展させるために、あらゆる業種で民主的な仕事を創出することに専念すべきだと、改めて観客に呼びかけた。「皆さんの地域でも、コミュニティー主導の経済成長を生み出すエンジンを始動させる」ための戦略はたくさんあると報告した。
• ニューヨークにある「ロングアイランドホームエンタプライス」という団体は、役務提供や、地域通貨との交換で、市価より安い家を建てる事業を行っている。メンバー同士で建築のスキルを教えあったり、コミュニティーの中で家の修繕や建設を助け合ったりして、安い住宅の供給に知恵を絞っている。
• 「ニューオーリンズ市民参加プロジェクト」（ニューオーリンズ市の政策決定の中に、市民参加を促してゆく団体）のディレクターは語った。ニューオールリンズの再建にとっては、民主的参加と経済活力が重要だ。民主的なコミュニティー経済の発展には、新しい戦略と労働者協同組合の成功という課題が必要である、と。

○以上、この労働者協同組合の発表会は、2008年6月20日に行われた。オルタナティブな経済発展戦略、連帯経済、労働者協同組合、そして、ニューオーリンズと湾岸地域の経済再建のための経済協力戦略について、いろいろのグループが情報とアイディアを交換した。