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WAGES流協同組合の作り方

翻訳:林 修


取材:ジョエル・シェーニング

WAGES(Women’s Action to Gain Economic Security)はカリフォルニアの湾岸地域で活動する非営利法人だ。すでに10年以上にわたって、低賃金で働くラテンアメリカ系女性労働者が労働者協同組合を結成するために援助活動を行ってきた。そのWAGESの活動の発展をたどる。

WAGESを作ったのは、この湾岸地域で働いていた3人のソーシャルワーカーだった。自分たちの経験から、福祉サービスは確かに重要ではあるが、ラテンアメリカ系女性たちの生活を本当に変化させ、経済的に安定させるためにはそれだけでは十分ではないと感じていた。その頃3人は、女性たちのある労働者協同組合のことを知った。個人住宅の清掃を専門とする協同組合を民主的に運営しつつ、集団で事業活動を行っていた。時には経営不振におちいることがあっても、地域の他の非営利法人からの援助もあって息の長い活動を続けていた。

そこで、低賃金で働く女性たちのために労働者協同組合の設立援助を行おうと、WAGESを3人で1995年に立ち上げた。理事のヒラリー・エイベルは、WAGESの活動の軌跡を3期に分けて話してくれた。

第1期では、WAGESは、労働者協同組合の組合員候補者の募集、教育に重点を置き、協同組合の利点などを候補者同士がともに学ぶことで事業発足に向けての仲間意識を養った。WAGESはこうした教育課程が終了した後、採算性調査などに対する技術支援や資金援助を始めた。そうして、2つの協同組合が誕生した。一つは、住宅向けの環境にやさしい清掃業で、もう1つはパーティ用品を扱う小売店だった。しかし、1年半後には、パーティ用品の店は閉店に追い込まれてしまう。

この第一期でWAGESが学んだことは、どの業種でも労働者協同組合に向いているわけではないということだった。たとえば、パーティ用品の小売店は、競争が激しく、売上を伸ばすためには、多くの専門知識が必要になってくる。それに対し、住宅に特化した環境に優しい清掃業は比較的専門知識は少なくてすみ、参入障壁もそれほど高くない。以後、WAGESは、ほかの業種は捨てて、この清掃業に集中していくことになる。

第2期では、WAGESが支援する協同組合は2つに増える。そして、そこで問題になったのが、経営方法だった。労働者協同組合では、組合員は所有し、経営し、労働することになっている。つまり、組合員は理事会に出席し、民主的に事業を運営していくのだ。ところが、組合員の女性たちは生活に忙しく、家では子供が待っている。彼女たちは、所有にかかわっているが、労働はするものの、理事会に出席するよりも家族と一緒に過ごしたいと思っている。また、WAGESは、技術支援としてマネージャーを各協同組合に派遣しているが、それぞれの理事会もこのマネージャーを指揮する立場にあり、結局マネージャーは責任ばかりが大きくて、それに見合う権限がないということで失敗した。

結局、協同組合の経営方法は代表民主制というところに落ち着いた。この体制をとることによって、時間と意欲のある組合員が経営に参加し、日常的な運営に参加できない組合員は負担が軽くなり、また、WAGESから派遣されるマネージャーの立場を、WAGESに対しても、各協同組合の理事会に対しても、明確にした。

第三期では3番目の協同組合、ナチュラル・ホーム・クリーニングが2003年に誕生する。33人の組合員を擁し、2008年には売上は百万ドルに達した。その成功の秘訣の一部は、WAGES のスタッフが理事会に参加したことだった。エイベルによれば、こうした体制をとることで、組合員の時間的制約の問題に対応するとともに、組合員の個人的問題と、組合経営上の問題を区別するため、WAGESの専門的知識を活用することが可能になったという。

ナチュラル・ホーム・クリーニングの新しいモデル中でも特筆すべきことは、150時間の訓練時間と400ドルの出資金が組合員になる要件となったことだ。低賃金で働く家庭のある女性労働者にとって、これは決して軽い負担ではないが、この効果は、本気に協同組合に参加しようとする人間だけを組合員に選ぶことができることだ。もう一つのこのモデルの特徴は、WAGESから派遣されているマネージャーの給与が、協同組合が調達可能となると、協同組合の負担となることで、それが、WAGESの保護期間の終了の証となった。

協同組合が保護期間を終えても、WAGESは各協同組合と緊密な関係を持ち続けている。各理事会に席をひとつ有し、各協同組合からサービス支援料を受け取っている。さらに、いまWAGESの傘下に協同組合はネットワークを形成しつつある。このネットワークでは、現存の協同組合の維持問題が中心となるため、WAGES は新しい協同組合創立の援助活動に専念しやすくなる。また、ネットワークの会費の一部もWAGESに振り分けられる。

WAGESはこの不況下にもかかわらず、好調のようだ。ちょうど1か月前に第4番目の協同組合、ホーム・グリーン・ホームがサンフランシスコで営業を開始した。エイベルの見通しでは、2011年までには、WAGESのネットワークはそれぞれ50人から60人の組合員を抱える6つの協同組合という構成になりそうだ、ということだ。


2009.09.18 Upload

元の記事:
http://www.geo.coop/node/364
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