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ケニアのひどいスラムにあるキベラ女子サッカー学校
2008年3月6日 ショーン・ラモリー


最近ケニアでは暴動が発生し、そのため国際的に注目を浴びている。25万人以上が避難民となり、1000人以上の死者を出した。住宅は焼失し、数え切れないほどの生活が破壊された。少しずつ平和を取り戻しつつはあるが、ケニア全域で都市の貧困の悲惨さは、未だひどい状態である。キベラは、ケニアで最大、世界で2番目に大きなスラムである。キベラの悲惨な生活状況の中で、地元住民がキベラ女子サッカー学校(KGSA)を設立した。学校は、機会に最も恵まれない、厳しい将来に直面している世界にいる若い女性に、体力的、知的に自信を持たせる手段を与えることを目的としている。

キベラは、コカコーラ、GM、ファイアストンのような多国籍企業や、英国や他のヨーロッパの多数の企業に、100万人以上の安価な労働力を提供している。有刺鉄線で囲まれているセメントの壁は、スラムと豪華なゴルフコースと分け隔てている。そのゴルフコースは、ケニアの大統領や海外のビジネスマンやエリートの人たちの接待に利用される。キベラは、深刻な住宅、水道、道路や衛生設備の不足に直面している。下水道、ごみ収集や医療のサービスも、公立の中等教育もない。犯罪、暴力、売春は日常茶飯事である。 要するに、キベラは世界で最悪の生活水準であると、多くの開発労働者からは見なされている。

KGSGはナイロビのスラム、キベラで唯一の無料の中学校であり、またケニアで唯一の女子のサッカー学校である。KGSAは2006年1月に発足した。アブドゥル カッシムとサリム セビットという二人のコーチが、スラムの生活の厳しい現実のせいで、最高の選手を失い落ち込んでいた頃に、彼らは、レイプや暴力、10代の子供の妊娠、エイズ、病気、売春、ドラッグ等による被害を目の当たりにした。彼らは、サッカー選手に安全な場所を提供するため、またこのような若い女性たちが直面する抑圧と闘うために、学校を始めることを決めた。

アブドゥルとサリムは、このような草の根の取り組みを始める意思はあったが、そのための当初の資金を持っていなかった。サリムは、自分の家を提供し学校の建物として使ったが、そのために彼自身4ヶ月間住む場所がなかった。アブドゥルとサリムは二人とも、かなりのカリスマ性とリーダーシップを発揮し、この学校建設のためにキベラの地域社会に協力を働きかけた。二人は、個人からの寄付を集め、NGOとの接触も始めた。生徒たちやサッカー選手たちへの懸命な働きと献身のおかげで、アブドゥルとサリムは、教科書、ユニフォーム、文房具等の購入や、電気代や家賃の支払いにどうにかこぎつけた。学校の生徒は2年間で11人から70人へと成長した。

学校で働く教師たちには、現在のところまったく無料奉仕である。彼らは地域の失業中の教師たちで、家族を養わなければならず、いつまでも無償で働いている余裕はない。しかし彼らは、とても生徒たちを愛しており、非常に献身的である。もしKGSAがなけれは、このような少女たちは、キベラの他のストリートチルドレンと同様に困難な生活を強いられたままであろう。

KGSAはキベラの若い女性に、知性と体力の強化を図ろうとしている。KGSAのサッカーチームは、ナイロビで最高とされており、多数のトロフィーを授与されていることが、そのことを証明している。最近、KGSAのサッカーチームは、国連が組織した平和のためのサッカートーナメントに参加した。このサッカーチームは キベラのすべての男子チームにも寄付を続けており、東アフリカ地域のトーナメントにも参加した。

アブドゥルとサリムは、生徒たちが毎日、朝食と昼食を受けることができる食糧支援のプログラムも開始した。以前このプログラムがなかった頃は、多くの生徒は、朝食か昼食を食べず、たとえとったとしても、一日に一度の食事しかとっていなかった。しかし、この食糧支援のプログラムは、維持費が高くつき、残念ながら学校が大変な財政難に直面した際に、最初に削減される対象となった。

最近、KGSAはマキナ村からより安全なキベラ地域に移転した。KGSAはより広大な土地を確保し、建物は元の4倍にもなり、生徒たちの体の成長にも耐えうる余裕ができた。最近のケニアの政情の発展を考慮すると、KGSAにとっては、安全確保がより大きな懸念事項である。このことは、KGSAがこの学校を、ケニアの中学校に一般的な形である全寮制の学校にしようしている理由の一つでもある。学校へ登下校は、犯罪や暴力、レイプなどの危険が伴うのである。

世界のあらゆるところで厳しい状況がある中、KGSAは非常に団結した地域社会である。最近キベラ全域で発生した政治的暴動のせいで、学生やその家族の多くは避難民となり、彼らの家が破壊された。アブドゥルとサリムや教師達、KGSAの仲間たちは、生徒達皆が無事に学校に戻れるよう保証し、メンバーの家族が生活を取り戻すための支援に、相変わらず力を注ぎ続けている。

KGSAの最も重要な側面は、KGSAが、この不公平と思われる世界に挑むだけの知性と情熱を持つ若い女性たちのための支援ネットワークであるという点である。KGSAは、ただ単純な学校なのではなく、愛と団結力のある地域社会なのである。


2009.10.20 Upload

元の記事:
http://www.populareconomics.org/ussen/node/69
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