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世界最大規模のチェーン店の主張、「うちはローカルでございます」
(スターバックス、ウォルマートからバーンズ・アンド・ノーブルに至るまで)
ステーシー・ミッチェル

翻訳/要約:林 修

世界最大の銀行の一つHSBCが、自分たちは「世界の地方銀行」だと言う。スターバックスは、わざわざ、ブランド名スターバックスをはずし、“15th Avenue Coffee and Tea”のように地名だけを冠して支店を展開する。ウォルマートでさえ、食料品にただ「ローカル」と書いたポップを掲げて、地元志向を強調する。

こうした大企業の動きは、消費者の地元志向の高まりへの対応だ。企業はこれまでも環境問題に関心があることをアピールしようとしてきた。これをグリーンなイメージ作りだとすれば、いわばその新版のローカルイメージ作りといえる。地産地消の考え方が広まって、ローカルイメージ作りに最も熱心なのは、食品関係の企業だが、それにとどまるものではなく、大手書店チェーン、バーンズ・アンド・ノーブルも、そのブログのサイトに「すべての書籍販売はローカル」とのスローガンを掲げて熱心だ。

本物の「buy local(地元で買い物を)」運動

地元で作られた物や地元の独立系事業者を応援して、地域経済を活性化させようと本当に努力している人々にとって、企業がローカルイメージ作りにいそしむ様子は、消費者の地元志向が本物である証拠ともいえる。こうした見方を語るのは、全米小売書店協会のダン・カレンだ。この協会にはおよそ1700の独立系書店が加盟し、加盟店がその独立性と地域性をアピールするのを援助する、「IndieBound」というプロジェクトを昨年開始した。

消費者の地元志向を示す例は多い。地産品の人気は上昇し、現在全米でファーマーズマーケットの数は4385あるが、 その3分の1は2000年以降にできたものだ。車を使わなくても、近辺の生協や自営の小売店で買い物ができる家のほうが、車で買い物にでかけざるを得ない郊外の家よりも価値が上がっている。

イギリスの大型C Dショップチェーン、ヴァージン・メガストアーズが米国に残っていた最後の店を閉店した今年の4月、独立系のレコード店は、第2回目の「レコード・ストア・ディ」のイベントでにぎわい、何十万もの音楽ファンが押しかけて、アルバムの売り上げは16パーセントの伸びを記録した。

それまで業界を支 配してきた大企業の圧力団体に対抗しようと、ニューオーリンズ、フェニックスなど、現在130都市以上で独立系事業者の連合が組織され始めており、3万以上の事業者が加盟している。そして、各連合が「buy local」,「local first」キャンペーンを通じて共通して訴えることは、地元の独立系事業主、地産品を選べば選ぶほど、中間層は復活することができ、環境破壊を防ぎ、全国チェーン店に生活を画一化されずにすむということだ。

筆者が勤務する、地域社会自立のための研究所(the Institute for Local Self-Reliance)が今年1月に調査したところ、消費者の地元志向が地元事業者をこの不況下で支えていることがわかった。商務省によると、昨年に比べて、休日の小売売上高は全体で約10パーセント下落しているが、「buy local」キャンペーンを展開している都市の地元事業者の売り上げの下落は3パーセントに止まっている。

大企業が注目

こうした消費者の行動の変化を、企業、消費者市場調査会社が気付かないわけがない。ニューヨークに本社がある、調査会社BBMGの調査で、産品がその地域で生産されたかどうかを重視する消費者が昨年だけで、26パーセントから6パーセントも増加したことがわかった。

そして、 ローカルの定義を小規模でその土地に根差すものだけに限る必要はないと説く、コンサルティング会社も現れた。大企業もこのローカルの概念を積極的に活用することができる。ローカルを違った風に考えることができるというわけだ。

一つの考え方は、ほんの形だけであろうと、店舗に地産品の品ぞろえをしておくということだ。はるばる遠い国から運ばれてきた作物、工業食品の大海に、地産品をほんの少し浮かべるだけで、ウォルマートは新聞に大々的に取り上げられた。しかし、地元の農家にとって、地元の食料品店よりもウォルマートに売る方が、 有益なのかという本質的な問題を突きつける新聞社はなかった。

ウォルマートのような大手のチェーン店にすれば、社会や環境に責任ある行動をとる企業であるというポーズをとるには、従業員の待遇を改善したり、二酸化炭素の排出量を減らしたりするよりも、この「ローカル」はお手軽な方法なのだ 。

ローカルの再定義

もう一つの再定義されたローカルは、地元の事業者でもなく、地産品でもなく、単に近くのという意味だった。そして、市場調査会社のミンテルによれば、大事なことは、偽のローカルだと非難されないように、わが社のローカルの定義はこうですよと明らかにすることだ。

最も近くにある「ギャップ」や「ロース」で買うことがローカルだという、チェーン店向きのキャンペーンが全国で展開された。あるショッピングモールによるキャンペーンは、不況を切り抜け、オンラインショッピングで消費者を取られないようにと懸命であり、また、多くの商工会議所が行ったキャンペーンはただ時流に遅れないようにというものだった。

こうしたキャンペーンも、形はいわゆる「本物」の「buy local」運動を模倣しようとしているが、地元店での$100の買い物の地域経済への経済効果は$45だが、全国展開のチェーン店で$100の買い物をした時の地元経済への経済効果は$13ドルにすぎないという調査報告に触れることは禁物だった。

たとえば、カリフォルニア州のフレズノ郡の経済開発公社は、$45経済効果説をチェーン店、地元店の区別することなく、キャンペーンで宣伝し、テレビのニュースでも同様に取り上げられた。このフレズノ郡のキャンペーンの目的は、オンラインショッピングや郡外でのショッピングを防いで、少しでも売上税額を上げることだ。理事長のスティーブ・ゲイルは、「あそこは大型チェーン店だから、ローカルじゃないというのは、全くナンセンスだ。彼らはここに投資をしているんだから」と説明する。

この種の売上税をあげるためのキャンペーンは、地域経済にとって害の方が大きいというのは、ジェフ・ミルヒンだ。ミルヒンは、筆者が理事を務める、独立系事業者連合の全米組織(the American Independent Business Alliance)の協同設立者の一人だ。地域にある大型チェーン店で買い物をしても、チェーン店は地元店と違って、印刷や会計などのサービスを当地で利用することがないからだった。

企業のローカルが勝利を収めるのか

企業はローカルの概念を利用することができるか、少なくともローカルがもっていた意味を混乱させて、無意味にしてしまうだろうか。

ローカルの再定義を提案したコンサルティング会社はできると言う。もともとローカルという言葉は、使い道が広いからだ。地域経済活性化を進めようとする運動家たちも、localという言葉のかわりにindependentという言葉を使うことが多くなっている。

法令を活用して、言葉の定義を明確にすることは可能だ というのは、オーガニック消費者協会の理事、ロニー・カミンズだ。彼はこれまで、オーガニック、ナチュラル、持続可能な、そして、ローカルなどの言葉の厳密な使用の規制を進めてきた。

しかし、ひょっとすると、大企業によるローカルイメージ作りは結局のところ、企業のイメージをかえって悪くして、小規模で、地元の、独立系事業者からなる、私たちが望む方向へと経済を導くことになるかもしれない。全米小売書店協会のカレンは言った。「人々は何が本物かきっとわかる、そして、その時には、その分本物の真価が高まるのだ」。


2009.10.20 Upload

元の記事:
http://www.populareconomics.org/ussen/node/138
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