アジア連帯経済フォーラム
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アジア連帯経済フォーラム 学びの旅レポート
埼玉県小川町・霜里農場訪問 
2009年10月4日



連帯経済フォーラムでは、日本国内をはじめアジアにひろがる“連帯経済“をみつけ、実際に現地を訪ねる「まなびの旅」を実施しています。今回の旅では、有機農業をとおした地域づくりで知られる、埼玉県小川町の霜里農場を訪問しました。参加したボランティアメンバーより、訪問の様子と小川町のとりくみをご報告します!


農場見学
 霜里農場の有機菜園を研修生の方に案内していただきました。農場では、虫が嫌うコンパニオンプラントを植えたり、合鴨農法を行ったりと、自然の働きを最大限に有効活用して農薬を使わない農業を実践しています。日常生活で出る生ゴミや排泄物も、微生物の働きを利用してバイオガス燃料としてコンロで利用されます。またバイオガスを発生させる過程で出る液体肥料は、農産物の肥料として活用します。農場ではニワトリや牛も飼育され、そこから卵や牛乳をまかない、最終的にはニワトリや合鴨は食用にするそうです。動物の排出物も有機肥料になります。まさに資源を循環させ無駄なく有効利用していました。

  
座学
  農場見学の後、廃校となった木造校舎を利用した会場でお話をうかがいました。まず「有機農業の現状」を、霜里農場の元研修生であり、有機農業の研究をしながら自ら実践している小口広太さんに伺いました。日本の農業従事者は現在約250万戸と50年前の半数以下になった一方、有機農業は着実に広がっているそうです。「生産−流通−消費」から成り立つ社会関係としての農業を見直し、地産地消の地域のつながりや、都市と農村、農村や農家同士の交流など、現代的な農業のとらえ方が必要であることをお話し頂きました。

 つづいて霜里農場の金子友子さんに「地域に広がる有機農業−霜里農場38年間の取り組みから−」と題して、ご自身と有機農業の関わりの歴史から、霜里農場の現在までお話し頂きました。金子ご夫妻は有機農業を実践しながら、有機農業に関わる若者を送り出そうと毎年実習生を受け入れています。こうした活動が国内、世界の仲間のネットワークをつくりだしています。また、自分が作ったものを地域で使うという理念のもと、地元の地場産業を結びつける活動も続けてきました。有機米から生まれたお酒や、有機大豆を使用した豆腐は地域の人気商品に成長しました。こうした実践をつづけるには、いかに地域のヒトと結びつくか、そしてコミュニティーや人間関係の中に入り込んでいくかということが大切だそうです。それは人と人との信頼関係に基づいた繋がりであり、農業だけに限らずすべてのことにおいて志を持ち、人の役にたつ、また困った時は助けてもらう相互扶助の関係こそ人生の生き甲斐につながるとのことでした。そして、小川町でも女性がもっと活躍することで、男性主導であった日本の有機農業の動きに活力をつけることができるとお話ししてくださいました。農業は「土作りが大切」だそうです。良い土を作れば、良い作物が出来る。この法則こそ有機農業の根底に流れている価値観なのではないかと感じました。

 そして最後に、「自然・人・物を生かした30世紀につながる持続可能なまちづくり」と題してNPO生活工房「つばさ・游」理事長の高橋優子さんにお話をうかがいました。生活工房「つばさ・游」は、有機農業を基盤とした「食」と「エネルギー」の地産地消モデルを市民共生ネットワークで創造する活動をしています。ミニコミ紙「小川町マップ」の発行をはじめ、エコな暮らしの知恵を学ぶ活動や地産地消、生ゴミ資源化などの事業に取り組み、また、みんなで仕組みを作る活動として、市民出資やコミュニティカフェも準備しています。今、力を入れている「市民出資」は、団体や行政だけでは資金を担いきれない状況に対し、住民や個人が出費者になることを通じ、事業の成果や損失を共有することにつながる仕組みです。最終的には「みなで作り、みなで見守る仕組み」を確立し、生産手段を持たない住民が農家と協力し循環型社会を作っていく、新しい「公共事業」へと発展していくとのことでした。

 今回の学びの旅で小川町を訪問し、地域での有機農業への取り組みを見聞きする中で、有機農業の動きは食の安全はもちろんのこと、それを超えたコミュニティーの形成へと繋がっているのを感じました。特に人間関係や信頼関係に基づくコミュニティーであり、その中では何年も先の未来、特にその地域が存続していくための活動を行っていることを知りました。それは決して損得勘定だけにとらわれた考え方ではないけれど、それぞれが役割や生きがいを持っている。そして、先々のことを考えるともっとも現実的かつ理想的な持続可能なコミュニティーのあり方ではないだろうかと思いました。


今回の旅のリンク

霜里農場
NPO生活工房「つばさ・游」
小川町まっぷ
小川町産野菜料理の店「べりカフェ つばさ・游」
 

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