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労働者協同組合のための参加型クレジットユニオン

By Ajowa Nzinga Ifateyo

労働者協同組合が、企業が支配する経済において競争に勝ち残るためには、 大規模な製造や生産事業に数百万ドルもの事業資金を必要とする。

「それが協同組合運動の欠点であり、基盤整備が必要な点だ。」と、一昨年プリンストン大学で物理学の博士号を取得した、マサチューセッツのソマビル在住のマイケル・リョンは指摘する。「個人的には、現在の協同組合が、大規模な成長に必要なメカニズムを持っているようには思えない。」

しかし、これを実現する方策はある。それは、大規模な「参加型」のクレジットユニオンを作り、このユニオンが、労働者が所有し民主的に経営されるような協同組合の設立・拡大に必要な融資を行うようにすることだ。「私の関心は産業と生産にある」とリョンは言う。

この場合の「参加型」とは、参加者自身が方針や決定を下すことを指す。例えば、ブラジルでは10年前から、地元政府による税金の投資先を、地域の人々が自ら決める参加型予算編成が導入されている。この運動は、アルゼンチンやベネズエラを始めとする他の南米諸国で展開され、他にもロンドンや、更にはアメリカのバージニア州ルイジアナ市の近くにあるトゥイン・オークス・コミュニティーのような所にも広がりを見せている。そしてこれらの運動によって、市民のニーズに応える革新的なイニシアティブが多く生まれてきた。

「私が知る限り、協同組合は企業の権能に対抗する最も効果的な方法だ」とリョンは言う。「協同組合は民主的な構造をしているので、資本家はそこから金儲けすることはできない。」リョンにはクレジットユニオンを立ち上げた経験こそないものの、彼は経験とスキルを持った人たちをリクルートする自信がある。労働者たちが職場で民主主義を得られると分かれば、彼らはまた、政治の民主化にも希望を見出せるのでは、とリョンは期待している。

リョンは人権問題に情熱を燃やしており、アメリカが、世界における自らの経済覇権を維持するために、世界中の人権侵害に深く加担したと信じている。世界の大多数の人々の基本的ニーズを満たす最良の方法は、ローカルな経済力を築くことである。基本的なニーズ、それはきれいな水と食料、識字、保健や住居などだ。リョンの目標は、アメリカにおいて、労働者が所有し経営する協同組合に根付いた全国的な経済インフラを構築することにある。

しかし、彼自身が言うように、労働者階級が協同組合を始めることはほぼ実現不可能である。その理由として、ひとつは、労働者の大多数が、大企業と競争できる事業を立ち上げるのに必要な資金を持ち合わせていないこと。また、一方の企業は、ほとんどの人々の生活に、過度なまでに影響を及ぼしているためである。

これを解決するために必要なのは、労働者の共同組合運動のみを支援するための金融機関だとリョンは信じている。彼によれば、参加型クレジットユニオンの目的は次の通りである。

  • 協同組合の設立に融資することで、給料が良く、やりがいのある仕事ができる民主的な職場を創出すること
  • 方針作りから意思決定までメンバーが関われるような、高度な民主的経営の下で運営すること
  • 右に挙げるようなトレーニングを全てのメンバーに提供すること。自己管理そして金融、大規模経済の構造、参加型経済、職場における民主主義、専門的なスキルなど
  • 経済のあらゆるセクターで、協力的に就職機会を提供すること
  • 以下の人々に職を提供するキャパシティーを構築すること
    ・700万人の失業者
    ・貧困ライン以下で暮らす何千万人もの低所得者もしくは潜在失業者
  • 労働者層にスキル、自信、責任感を持たせること
  • 民主的な意思決定権を全ての労働者に与えることで、経営者、管理者、そして調整役の影響を、排除ないし低減させること

従来の銀行と同じサービスを提供できるクレジットユニオンを結成するには、少なくとも30万ドルが必要だとリョンは見積もっている。この見積りは、ナショナル・クレジットユニオン・アドミニストレーションからの情報に基づいて算出しており、数ヶ月の運用コスト、コンピューター機器代、コンサルティング料、そしてオフィス賃料も含まれる。

リョンは既にいくつかの既存の協同組合融資ファンドに声をかけ始めている。ボストンのICA/Local Enterprise Assistance Fund、The Cooperativev Fund of New England、The North Country Co-op Development Fund、ミネアポリスのThe North County Cooperative Federal Credit Union、そしてケンブリッジのOwnership Accociatesといったところだ。彼は、上記のような組織の背景や経緯などの情報をヒアリングしながら、かつ自分のプロジェクトに興味を持つ人達を見つけたいと望んでいる。

更にリョンは、近頃創設された、労働者協同組合及び従業員所有企業の事業者団体である、アメリカ合衆国労働者協同組合連盟(USFWC)にも打診しているという。協同組合には、クレジットユニオンを結成するために必要な「共通項」がある。その共通項とは、メンバーシップの連携、地理的な関連、或は同一集団への所属といったことで、これらの要素はクレジットユニオンのメンバーが共通して持っている必要がある。

クレジットユニオンを結成することは決して容易ではないだろう。設立費用の30万ドルを調達することや、事業立ち上げのために銀行業務経験のあるチームを組むこと、そして3000人の創立組合員を募集することはかなり難しい。その上、設立後にも課題はある。「クレジットユニオンは、協同組合が成功できる産業分野を発見する専門知識を持つ人々を必要とするだろう。」そして最後に、「これはとても長期的なプロジェクトと考えている。」とリョンは語ってくれた。


2009.09.25 Upload

元の記事:
http://www.geo.coop/node/112
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