アジア連帯経済フォーラム
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「良心」のフリートレード
国境でのフェアトレードを通した連帯経済の構築


著者:Julie Steinkopf Rice、Jim Rice(ニューメキシコ州立大学社会学教授)

「フェアトレードで貴方が支払ったお金は、真の持続的社会の発展に寄与します。」 これはフェアトレードとは何かと、ラス・クルーセス(ニューメキシコ州南部の都市)の社会活動家April Willefordに質問した際の答えである。

ラス・クルーセスにあるMountain View協同組合の駐車場の一区画で、毎週日曜の朝、ファーマーズマーケットが開かれている。Aprilは、シウダーフアレス(メキシコ)の先住民が作った民芸品が並べてあるテーブルの傍に立っていた。「これらの商品から得られるお金は、一ガロンのミルクや靴1足以上の価値があります。このお金で、Lomas del Poleoの市民が居住権を勝ち取るための弁護士費用が賄えるし、ALDEA(近隣自立発展のための同盟)の彼らの事務所の建築費用に充てる事が出来るのです。」

Aprilは、貧困やグローバリゼーションがもたらす負の影響を撲滅するためのフェアトレードを推進している地域活動家の一人であり、「フェアトレード」は、「連帯経済」と呼ばれる、より大きなグローバル活動の一つとして捉えられている。

「連帯経済」とは、連帯意識・相利共生・協調、そしてあらゆる面に対する公平性、といった原則に基づいた草の根運動を指す。「フェアトレード」は、連帯経済活動の一つであり、生産者を犠牲にした不当な取引に異を唱え、生産者と消費者の公平な取引関係を構築していくことが目的である。

アメリカ・メキシコ国境付近では、フェアトレード等の連帯経済活動を頻繁に目にする事ができる。なぜなら、人々の間で社会的及び経済的不利益が国境付近では目立ち、フェアトレードを通じた連帯経済の構築が、それを防ぐための効果的な手段とされているからである。たとえば、チアパスのマヤ族の女性達が作った織物を、ボランティアたちがファーマーズマーケットに出品しているのを目にする事ができる。

ファーマーズマーケットでボランティア活動を行っていたのは文化人類学者のChristine Eberである。彼女は髪を三つ編みにして、色鮮やかなマヤ族の民族衣装を身につけ、マヤ族の織物が敷き詰められたテーブルの前に立っている。Christineは、「ラス・クルーセス・チアパスコネクション」―多数の団体や大学の尽力により誕生したボランティアグループで、現在は、Sophiaサークル(女性団体)の下で運営されている―の設立者である。この団体の主な活動であるファーマーズマーケットでの織物販売により、チアパスの女性の収入源及び持続可能な居住権の確保、そして彼らの伝統文化を守る事が可能となる。クリスティーヌは「当団体は、チアパスの女性の自立意識向上を目指しています。」と話す。

ラス・クルーセスから40分ほど車でいったところに、エルパソ(米テキサス州)という町があり、そこはシウダーフアレスと国境越しに向き合っている。この町では、Kinleyの喫茶店に行けば、美味しいフェアトレードコーヒーを飲む事が出来、またフェアトレードの食料品がほしければ、SunHarvestで買う事が出来る。

エルパソのフェアトレード商品の普及促進が、エルパソフェアトレード連合の目指す目的である。眼科医のJoe Michonとその妻Lindaは、社会的立場の弱い人々の目の治療を行うために世界中を飛び回ってきた。彼らは、フェアトレードはフリートレードの一種であると言う。「私たちにとってフェアトレードは、良心のフリートレード(自由貿易)であり、それは世界中の人々を”平等”に導くものである。フェアトレードは貧しい人々がフリートレードを行えるようにするための実践的な方法である」

Las Cooperativa de la Frontera de Palomas y Columbusという団体に1年半所属していたJanet Shepardは、次のように話している。「レジ袋や古着といったリサイクル商品から手工芸品を作り出す『地球にやさしいフェアトレード』を実践している女性たちは、とても創造性・機知に富んでいる。我々の役割は、女性やその家族たちがこのような新しいスキルを身につける為の手助けを行い、彼女らの収入源確保や生活向上に寄与することです。」またJanetは、国境付近の連帯経済は今後活性化していくと予想している。「貧困地帯であるがために、人々はその必要性を痛感し、女性達は彼女らの生活改善のために一生懸命に働くのです。」

ここで紹介した話は、貧困やグローバリゼーションのもたらす負の影響を軽減するための、ほんのひとつの取り組みにすぎない。我々は、このようなフェアトレード活動を支援する事で、連帯経済の構築や、社会的な関心を呼び起こす事に貢献できるかもしれない。


 *Julie Steinkopf Riceは、ニューメキシコ州立大学の社会学教授である。彼女はフェアトレードの研究をしており、ラス・クルーセス―チアパスコネクションでボランティアを行っている。Jim Riceもまた、ニューメキシコ州立大学の社会学教授である。


2009.09.14 Upload

元の記事:
http://www.populareconomics.org/ussen/node/128
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